タローの日記

そこはかとなく書きつくる

もし大学院に進学していたら

 僕は高専(高校と短大がくっついたみたいな学校)から、3年次編入という少し変わったコースで、大学に裏口入学した。「裏口」といってるのは謙遜でもなんでもなく、僕が受けた学部は、ペーパー試験なしの、面接とプレゼンだけで入れるという、正真正銘の「裏口」だったのだ(AO入試みたいなイメージがわかりやすいかも)。面接時、僕は少しでも印象をよくするため、「博士課程まで進学します!」と堂々と宣言した。この時点で、博士まで行く気は正直なかったのだけど、そうはいってもさすがに修士までは行こうかなと考えていた。ちなみに、同期の3編生も、似たようなことを言って合格を勝ち取った人が多くいたけど、結局進学したのは、14人中3人程度で、あの面接の意味はほとんどないのではと思える。
 その後入学して、大学3年生の後半には卒業研究が始まり、同時に就職か進学かという選択が近づいてきた。僕は高専でも卒業研究をやっていた(とはいっても本当にお遊びのようなものだけど)ので、自分が自由な時間を与えられても、それを有効活用できないことを身に染みてわかっていた。そして、大学での卒業研究が始まっても、やっぱり身が入らないことを痛感した。たぶん、進学しても、クズみたいな時間しか過ごせない。それだったら、就職してしまったほうが、強制的に働かされる分、まだまともに過ごせる。そう思って、就職することにした。あのときそういう決断をしたことに、後悔はない。
 でも最近、「喜嶋先生の静かな世界」という、森博嗣先生の本を読んで、この本をあの時読んでいたら、もしかしたら大学院に行こうと思ったかもしれない、と思えた。
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 森先生は、大学の準教授から小説家デビューを果たすという、異色の経歴の人だ。僕は森博嗣先生のミステリーやエッセイが好きでよく読むのだけど、この本は数ある作品の中でも、一二を争うほどのお気に入りになった。以下、本の紹介文。

文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。

 紹介文の通り、主人公が、学部・修士の研究を経て、研究の楽しさに触れ、研究に没頭していく様子が、この本では描かれている。森先生自身の経験に基づいているためか、その様子は読んでいるとこちらまで熱くなってくるほど楽しそうで、生き生きとしていた。別に竜を退治しようとか、勇者になろうとか、そんな凄いことが描かれているわけではなく、淡々と主人公の大学での生活や考え方の変化が書かれているだけなのだけど、なぜかその文章にすごく惹かれて、すぐに読み切ってしまった。残念ながら、僕は学部の卒業研究で、研究の楽しさを感じることはできなかったけど、この本を読んで、なんとなく、その一端に触れられたような気がした(実際の経験とは程遠いものだろうけど)。僕もいつか、なにか小さなことでも研究してみたいな。
 
いつも僕の駄文ブログにスターをくれるsansosanの誕生日投稿を読んで、ちょっと真面目に書いてみました笑。お誕生日、おめでとうございます!